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「おとうと」 市川昆

 幸田文原作、市川昆監督の「おとうと」(1960年公開)をDVDで見ました。


おとうと [DVD]
おとうと [DVD]

岸恵子主演 (2007/09/28)


 原作は、幸田文の自伝的作品といわれていて、実話のようです。時代は大正後期と考えられます。

 映画のキャストは17歳の姉を演じる岸恵子が当時28歳、14歳の弟を演じる川口浩が24歳と、ちょっと無理がありましたが、とにかく岸恵子が素晴らしかった。一癖ある役をやらせたら天下一品の岸田今日子もいい味を出していました。

 この映画では「銀残し」という特殊な技法が使われているのだそうで、カラー映画とモノクロ映画の中間のような色調でした。時代や話の内容に合っていたと思います。

 ストーリーについては触れませんが、見てよかった。印象に残る作品でした。原作もぜひ読みたいです。




 以下はきものに関する覚書。服装の時代考証がどこまで正しいかは分かりませんが、映画が作られたのは今から50年以上前、作品の時代から40年しかたっていないので、大正時代の様子は、実際こんな感じではなかったかと。



 ・デパートの男性管理職、一人洋装、二人和装。街では男性のほうが女性より洋装率が高く、軍服姿も。

 ・一家は普段は全員着物姿。女性のきものの袖は長い。

 ・中学生の弟君は、学校はガクランに学帽。家に帰ると浴衣に着替える。

 ・姉を含め、女学校の生徒たちはエンジの袴、上は地味めの小紋。

 ・普段は紬、小紋、家では浴衣のことも。帯は半巾を貝の口や小さい文庫に。帯も色が地味。半巾にしては幅の広い帯も。

 ・羽織の丈は長く、色は地味。家の中でも出かけるときも。

 ・リウマチ病みの母は、浴衣・紬+兵児帯。襟元が決まっておらず、衿の見え方も不均一。やつれた印象。

 ・気丈な娘はきもので弟と取っ組み合いのけんかをしたり、下駄で走ったり。

 ・娘も母も、衣紋も抜かず、首にぴったり。前の衿あわせは縦に長い。後ろの首からも半襟が見える。

 ・家事をするときは、きもの+たすき掛け、割ぽう着、小さな前掛けなど。

 ・近所の買い物は、浴衣のように丈が短く、足首を見せていることも。帯も半巾。

 ・尋ねてくる母親の友人は、小紋に紋なし黒羽織。やはり衣紋は抜かず。でもアールデコ風の髪型で、服もずいぶんと改まった印象。

 ・同じ着物でも、髪を整え、長羽織を羽織ったり、日傘を持ち、全幅の帯を締めるとつと、だいぶお出かけな印象に。 

 ・美容院で髪を島田に結ってもらったときは、衣紋をまんまるく抜き、前の襟元はきっちり詰め、半襟をぽってり幅広くたくさん見せて。着物も華やかなフーシャ色の銘仙ぽい小紋。


テーマ : きもの キモノ 着物
ジャンル : 趣味・実用

「山桜」

 最近よく、きものが出てくる映画のDVDを借りてきて見ています。

 今日は「山桜」を見ました(公式サイトはこちら)。

山桜
山桜
田中麗奈、篠田三郎 他 (2008/12/24)

 とってもきれいな映画でした。映像も、そして物語も。美しすぎて出来すぎクンな感もありますが、絵空事と分かっていても、やっぱりこういうの、いいなあ、と思います。

 舞台は江戸時代のどっかの藩。大名とかではない、普通の藩仕え武家の、静か~な恋愛モノでした。

 物語を楽しみつつも、やはり映像で目がいくのは、キモノ。今まできものに着目してドラマや映画を見たことなんてなかったので、初めて知ることがいっぱいでした。

 たとえば、江戸時代の武家の女性って、帯結びは文庫なんですね~。・・・なんてことも、初めて知った^^;。高く、かっちりした文庫。老いも若きも、娘もお母さんも、武家の女性はみーんな文庫でした。

 しかも帯の幅が帯によってかなり違う。よく分からないけど、半巾帯よりも広い幅の帯を全幅で締めていることもあるような・・・。

 帯締めは決まって丸ぐけ。帯揚げはしていないみたい。

 それよりなにより、ビックリしたのが、きものです。形は普通なんだけれど、袖口や裾から八掛がみえている!! 出ている幅はきものによってまちまち。中には遠目にもはっきりわかるほど、しっかり見えているものも。その奥にはポップな柄の(?)長襦袢がチラリ。

 ちょっとしたお出かけにはちりめん地の小紋、家では紬でした。

 襟元は、若い人ほど詰め加減、年配の人ほどあわせ方が浅い。首の細い人はやっぱり襟元がきれいですね。壇ふみの長くて細い首の襟元にはもう、ホレボレ。

 足元は、下駄か草を編んだ草履に、白い足袋。ペタンコの草履に、オシャレな花柄の鼻緒が付いてた^^。

 家には使用人はいるものの、主人公もたすきがけで袖を上げ、ちっちゃな前掛けをして、針仕事をしたり炊事をしたり、時には鍬までもって畠仕事していました。

 どこまで時代考証がしっかりしているのかは分からないけれど、お姫さまじゃない、働く人のきもの姿はとても参考になります。着こなしとか帯結びとか、ぜーんぶ参考になる。長くて細い前掛け、わたしもこんなの欲しいな、作っちゃおうかな、と思ったり。


 きものに興味を持って初めて、映画のこんな楽しみ方を知りました。この映画には生け花も出てきます。生け花に興味があると、そこでもまた楽しめるんだろうな。

 興味が増えると、楽しみが増える。同じものを見ても。

 なんだか得した気分です^^。



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Author:うさぎ
50歳にして着物を着始めた、最初の一年間の日記です。 

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