「春の雪」 三島由紀夫原作

 三島由紀夫原作の東宝映画「春の雪」をDVDで見ました。

春の雪 [DVD]
春の雪

(2006/04/28)
妻夫木聡、竹内結子 他


 ストーリーは微妙・・・。純愛モノなのかな、と思いますが、そもそもなぜ二人がそこまで惹かれあうのかがよく分からず、感情移入できなかった。主人公たちの心情が理解できないと、せっかくの純愛も、ただの身勝手にしか思えない。二人が惹かれあっていく過程をもう少し描いて欲しかったと思います。

 でもアマゾンのレビューでは評価が高いようなので、原作を読んでから見ると、また違った感想になるのかもしれません。映画って時間が限られているから、エピソードが削られがちですものね。

 また全体的に、作り物めいた映画ではありました。俳優さんたちがいかにも演技しているかんじで、リアリティに欠ける。ただ唯一、先日見た「おとうと」にも一クセある役どころで出演していた岸田今日子が50歳年をとって出てきて、またしても異彩を放っていました。この方の存在は本当に奥行きがある。登場するだけで、作り物っぽかった物語がいきなりリアリティを帯びる。本当にこういう人がいたんじゃないか、という気がしてなりませんでした。


 ともあれ、きれいな映画でした。絵になるシーンがいっぱい。

 着物姿がたくさん出てきたのも楽しめました。有産階級の女性は、明治時代くらいまで着物を端折らず、きものを引きずって着ていたそうですが、大正時代が舞台のこの映画では、公家の血を引くおひいさまのヒロインも、現代同様、端折って着ていました。

 でも着物の衿の打ち合わせは今より浅かったようですね。年齢に拠らず、身分に拠らず。そして半襟はぽってり。今は、着物の衿のV字も、半襟のV字も角度がそれほど変わらないけれど、この映画の着物は、半襟の角度が浅く、着物の衿は鋭角で、角度がかなり違いました。

 あと、帯の位置が今よりだいぶ高いような・・・? 胸のほうまで帯が来ている。もしかして、帯の幅が広いのかな? 今まで見たほかの映画でもそうですが、昔が舞台の映画って、いろんな幅の帯が出てくるんですよね。今は胴に巻く部分は、どんな種類の帯でもだいたい15センチ前後ですが、昔のは帯によってすごく幅が違う。

 着物のかたち自体は変わらないのに、着方には流行り廃りがあるって面白いですね。洋服は、時代につれ、そもそも服の形からして変わるけれど、着物は形は変わらず、着方だけが変化していく。

 洋服はタックをとったりウェストを絞ったりして、誰も着ていない状態でもすでに人間の体の形をしていますが、着物は限りなく一枚の布に近く、誰かが着て初めて、衣服として完成するようなところがある。

 だから着物を着るのって難しいんだ、と思いました。着方によって形が変わってくるから。「着物の形は着る人の裁量に任されている」とでも言えば聞こえはいいが、つまりそれは「人によってはうまく着られない」ってことわけで・・・^^;。


 ヒロインを演じた女優さん(竹内結子)は最初、振袖を着て出てきたときには、それほどきれいだとは思いませんでした。顔の造作は「細雪」で雪子を演じた吉永小百合にソックリで端正なのですが、何か板についていない感じで、平凡な印象。特にこれといった魅力が感じられませんでした。

 ところが話の途中で、振袖以外のものを着たときのヒロインが、あまりにきれいなのにビックリ! 特に薄い服(洋服)や下着姿のときなど、ドキッとするほど目が美しく、人とはこれほどまでに変わるものかと思いました。

 何か、この女優さんのもつ、本来の持ち味が出てきた感じ。「美しさ」とか「魅力」って、造作が整っているかどうかとはまた別のところにあるのかもしれませんねえ。

 「何を着るか」だけでなく、「どうそれを自分のものにするか」も大事。ただ着せられているだけでは、どれほど贅沢なものを着せられていても、それほどよくは見えない。表情なり、しぐさなりにその人なりのパーソナリティが感じられ、それが身に着けたものと作用し合って初めて、フワーッと魅力が浮かび上がってくるんだなあ、と感じました。

 


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Author:うさぎ
50歳にして着物を着始めた、最初の一年間の日記です。 

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