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「東慶寺花だより」 井上ひさし

 井上ひさしの小説「東慶寺 花だより」を読みました。全くどこも「きものの本」ではありませんが、鎌倉関連というだけで、わたしの中では「着物」カテゴリの位置づけなので、ここに整理^^;。

東慶寺花だより (文春文庫)
東慶寺花だより (文春文庫)

(2013/05/10)
井上 ひさし

 軽妙洒脱な時代小説でした。舞台は江戸時代。縁切り寺として有名だった鎌倉の東慶寺に駆け込む女性一人ひとりの事情が、章ごとに描かれた一話完結型の物語。梅の章から藪椿の章まで、各章には東慶寺に咲く花の名前がつけられ、東慶寺の一年が綴られています。

 女性のほうから離婚を切出すことが難しかった江戸時代、実際には悲惨なケースが多かったのでは?と想像しますが、そんな駆け込み寺も、井上ひさしの手にかかれば、どんでん返し満載の、飄々と粋な人情モノになってしまう。全体的に、ほんわかした雰囲気です。

 実際に書かれたのはほんの数年前、井上ひさしの遺作となった作品ですが、もし書かれたのが江戸時代だったとしても、この話は人々に愛され読み継がれ、今ごろ古典として残っているのでは?という気がします。当時の世の中は、理不尽なことが多かったからこそ、こういう気風がよく、スカッと後味のいい話が受けたに違いない。胸のすくような話ばかりでした。

 東慶寺に駆け込む女性の事情と思惑は様々。必ずしも夫と離縁したい女性ばかりではなく、いろんな事情があって、性格も身分も様々ですが、どの女性も強く、1本筋が通っている。そこが素敵。

 また素敵なのは、東慶寺を仕切る法秀尼さま。この女性は実在の人物で、水戸藩のお姫さまだったようですが、水戸のご老公顔負けのご活躍。さすがに史実とはだいぶ違うのでは?と思いますが、このはじけっぷりに喝采しました。

 しかしそれにも増して、この本の本当の主役は、稀有な役割をになっていた東慶寺そのもの。いまなお四季折々に美しく、優しい風情をたたえているあの寺は、こんな稀有な役割を担い、凛とした風情で歴史を経てきたのですねえ。

 この本を読み始めた最初の数ページは、知らない言葉はあるし、江戸時代の世界観に慣れなくて、何がなにやらサッパリ分からず、途中で読むのをやめようかと思ったけれど、そこを我慢して読み進めてよかった。ほんの数ページ後からは、途中でやめられないほどに面白い世界が待っていて、一日で読み終えてしまいました。

 東慶寺の四季は完結していますが、未消化のままの伏線がいくつかあるので、著者の余命がもう少しあったら、まだ続きを読めたかもしれません。そこが残念です。




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50歳にして着物を着始めた、最初の一年間の日記です。 

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